人工呼吸器トラブルのコラム
- 掲載:2008年01月
人工呼吸器トラブル対策について ~電源電圧異常例~
人工呼吸器のトラブル原因は大きく分けて機器側の問題と使用上の問題の2つに分類されます。機器側の問題について、その機器の設計、製造上などの根本的な要因を除いた場合、多くは「故障」ということになります。主には、初期故障、偶発故障、劣化故障などです。一方で、使用上の問題としては、適切な使用がされずに発生した問題、つまり、誤使用、不正使用、環境未整備が挙げられます。日常点検や保守点検の未実施が原因による故障、ノイズなどの外的要因による故障なども含まれます。
故障を未然に防ぐには?
医療機器の開発・設計において、安全性の向上が図られる一方で、特に近年の医療機器は多機能化、小型化により精密化が進んでいます。これに伴い、多くの電子基盤、電子素子、センサ類を搭載し、故障リスクは益々高まっていると言えるでしょう。そこで、如何にして故障のリスクを引き下げるか?如何にして故障の可能性をゼロに近付けるか?その最も有効で重要なことは、定められた点検を確実に実施すること、またその機器を使用する環境を整える事です。
1)保守点検について
人工呼吸器をはじめとした機器の保守点検は、平成19年4月1日施行の医療法等の一部を改正する法律、関連通知に改めて示されたとおりで、添付文書の記載に基づき実施が必要です。そして、これらの実施については医療機関の責務として定められています。
機器の故障を未然に防ぐため、故障をいち早く検知するには、半年あるいは1年毎に実施するいわゆる定期点検が必要不可欠であり、更には実際に臨床現場で行われる使用前、使用中、使用後の点検が重要なのです。
2)環境整備について
人工呼吸器における環境とは、代表的なところでは電源、酸素及び圧縮空気、塵埃の状態、周 辺の電波などが挙げられます。これらは、機器の作動停止、作動不良、誤作動などの故障を引き起こす要因になり得ると考えられます。仮に故障しない場合で も、このような環境が適切でない場合には、機器に負荷をかけ続ける事となり、劣化を早めることが予測されます。 故障の原因となる環境異常の代表的なものとして、電源異常が挙げられます。これについて医療機器側の規格として「JIS T0601-1」があり、電源電圧仕様100V±10%以内の電源変動環境下において動作する事を求められており、認可された医療機器はこれを満たしてい ます。つまり、医療機器を使用するためには、院内の電源が100V±10%で安定している事が前提であると言えるでしょう。
医療機関で発生した電源異常について
1)電圧降下
この施設では人工呼吸器がリセットする事象が発生し、電源調査の結果、15V以上の幅で電圧変動が多発している事が判明した例です。記録では通常約 100Vの状態から、何らかの要因により約82Vまで低下していることが分かり、配電盤の工事をしていただき電圧も安定、その後機器のリセットも発生しなくなりました。
2)ノイズ
丸囲みで示す部分の波形に乱れがあることがわかります。
ノイズやトランジェットオーバーと呼ばれる急峻な電圧上昇は、機器のリセットや作動停止は勿論のこと、機器を破壊してしまう恐れがあります。過去には、同じ電源系統に接続された医療機器から発生したノイズの影響で、輸液ポンプが誤作動した事例があったそうです。
3)瞬停
バッテリを搭載していない機種でリセットが発生したことから、電源調査を実施したところ、人工呼吸器を接続使用していた電源系統で瞬停が発生している事が判明した例です。
では、実際に電源異常によるトラブルを未然に防ぐためにはどうすればよいのか。大きなものでは、院内の電源工事などが必要になるケースもありますが、まずは以下を実践、心がけてください。
1.人工呼吸器等生命維持装置は、自家用発電設備、無停電電源に接続された3Pコンセント(赤色・緑色表示)に単独にて接続する。
2.コンプレッサーなどの高消費電力の機器と同じ系統での併用を避ける。
また、電源系統の容量に注意する。
3.環境変化、特に増改築工事や落雷(気候)に注意する。
4.「JIS T1022」に基づく設備設計及び保守管理。
5.無停電電源装置(UPS)の併用。
6.機器の取扱説明書や本体ラベルに記載されている電気規格、仕様を理解しておく。
弊社では安全な環境で、安心して機器をご利用いただくためのご提案をさせていただきます。最寄の弊社事業所、サービス担当者にご相談ください。
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